この演習の目的は通りです。
今回の実習では、10Base-T Cableの作成方法を学びます。
10Base-Tのケーブルを見ると、二つの部分、すなわち、ケーブル本体とコネクタ(ケーブルの両端についている金(?)具(1))からなります。
これらは、それぞれEIA(2) / TIA (3)で制定された規格に指定されている部材を利用します。
特に、10Base-T Cableの規格に関しては、EIA/TIA-568Bで制定されているCategoly-5のCableを利用します。
色々な用語が入り乱れて、混乱しそうです。LANケーブルに関して簡単にまとめておくと、以下のようになります。
ケーブルの線の部分の材質を指したもので、Unshielded twisted-pair (非シールド・ツイストペア線)の略。
加工が容易で、アメリカでは、電話線としても利用されているため、Networkでもよく利用される部材になっています。
アメリカの工業規格で、10Base-Tなどのケーブルの規格をまとめています。
内容的には、アメリカ国内の規格なのですが、CISCOがアメリカの会社と言うこともあり、また、全世界的に利用されます。
EIA/TIA-568Bでは、いくつかのCableの規格を定めており、その規格によって、通信性能が異なります。Categolyの後ろのが大きい方が通信性能が高いことになります。
10Base-Tは、10Mbpsで通信できれば良いので、実は、性能的にはCategoly-3のケーブルでで十分です。
Categoly-5は、一つ上の100Base-TX ( 100Mbpsで通信する)用の規格ですが、性能が上ということだけで、10Base-Tでもそのまま利用することができます。このためか、最近は、Categoly-3のケーブルは見かけなくなり、10/100Base-T用として、Categoly-5のケーブルが売られています。
コネクタの方は、RJ-45呼ばれるものが使われています。
ケーブルの工作工具は、専用の圧着工具が一つあれば済みます。これには、ケーブルを切断し、切り口を揃え、そのケーブルとコネクターを繋ぐ機能が一つにまとめられているようです。
ただし、ケーブルを切ったり、切り口を揃えるには、ニッパーを利用したほうが便利ですし、回りの被覆を剥いて、中の線を出すにはストリッパーがあると便利です。
また、圧着後、それが成功しているかどうかを確かめるケーブルテスターもあった方が良いでしょう。
ただし、ケーブルが本当に規格に則っているかどうかを確認するには、高価なケーブルテスターが必要になります。
。
この演習では、簡単なケーブルチェッカ(4)を利用します。
ケーブルを作成するためには、まず、以下の資料を参考にしてください。
最初はストレートケーブルを作成します。これの作成手順の概略は以下のようになっています。
被覆を剥いたら、2本で1対になっている縒り線が4対、計8本の電線が被覆に包まれていたことがわかります。1対は、一方が完全にその色で、残りは、その色と白のストライプになっています。
色は、橙(Orange)、緑(Green)、青(Blue)、茶(Brown)の四色になっているはずです。
対になった線は、縒ってあるので、コネクターにつけるには、この縒りを解す(7)必要があります。
そして、縒りを戻した8本の線を左から次の順(8)に並べます。
この時、線をこの順に並べた状態で、線を指でしごきます(10)。これによって、縒りのために、よれよれになっていた線を真っ直ぐに伸ばす(11)と同時に、線の順番が整うようにします。
ケーブルの先の線を揃えたまま、コネクターに差し込みます。
この時、線の先は、左が白橙になるようにし、また、コネクタは、腹が上になるようにして手前から奥の方へ挿し込みます。
挿した時点で、次の3点をチェックしましょう。
うまく差し込めたなら(13)、圧着工具で、コネクタを線に圧着します。
一度、圧着をしてしまうと、上記の手順で誤りがあった場合に、コネクタごと、線を切り離し、最初からやり直す羽目になりますので、圧着をする直前に、もう一度、上記の3点をチェックしてください。
反対側のケーブルの先にも同じ手順で、コネクタを付けたら、次は、通電チェッカーで通電するかどうかを確認します。
一般的に言えることは、通電チェッカーでパスしなければ、普通は、10Base-Tとして利用できない(14)、不良ケーブルである(15)ということです。
「必要な長さ」と言っても、もちろん、ぎりぎりに切ってはいけません。むしろ、多少余裕を持たせた長さに切る必要があります。
理由は色々ありますが、まず、コネクタの圧着に失敗した場合に、ケーブル毎切り離す必要がありますから、その分、短くなります。
しかし、方針として、「長いケーブルは切って短くすればよいが、逆できない」という考え方から、長め長めに切ると間違いはないでしょう。
もちろん、長すぎて、余ったケーブルがとぐろを巻いていると、それはそれで、みっともないのですが...。
なお、実習の時には、1m〜2m位の長さで作ってみましょう。
線の縒りを解す時には、必ず、袖の所を親指で、ぎゅうっと押さえ、縒りの戻りが、袖の中まで影響しないようにすることが大変重要です。
もし、袖の中まで、縒りが解れてしまうと、通信性能が落ちる原因となります。
この順は、EIA/TIA-568Bに指定されている順番です。後に述べるように、実は、この順は必然ではない(つまり、他の順番でもうまく行く順がある..もちろん、いい加減ではうまく行かないが.. )のですが、
10Base-T Cableとして、正しく通信できるケーブルであっても、線の順が、この順でなければ、EIA/TIA-568Bという規格には則っていないということになります。
とは、言っても別に定規で測る必要はありません。大体、人指し指の指先から第一関節までの長さだと思えば十分です。
多少、線は袖から出入り出来ますので、それほど神経質にならないように。
なお、最初は、多少長めに切るとよいでしょう。
ケーブルの先を揃えておいたのに、コネクタに剌すと、途中で、線が曲って、奥まで入らないことがある。その場合は、その状態で、一旦、外に引き出し、不揃いになった、先を、再度、ニッパーで切揃えるとよい。
この為に、予め、余裕を残さないと、また、袖を剥く必要がでてしまう。
これも、後で述べるように、実は、チェッカーでパスしなくても、10Base-Tのケーブルとして利用可能な場合もありえます。
しかし、CCNAとしては、チェッカーの通らないケーブルは不良ケーブルとして、無条件に排除するものだと考えておいた方が良いでしょう。
逆は、真ではありません。つまり、チェッカーが通っても、10Base-T (というよりは、EIA/TIA-568B )の規格に準拠していない可能性があります。
しかし、ケーブルが短い(まあ、10m以下.. )のであれば、経験的にチェッカーで通れば、普通に通信できます。
実習としては、ケーブルが出来れば、おしまいですが、一応、次の二点も必ず、行ってください。
ストレートケーブルの次はクロスケーブルの作成方法です。
ストレートケーブルとクロスケーブルの違いは、片側のコネクタにつける線の順がストレートと異なる(16)ということだけです。
その片側の色の順は、以下のようになります。
これ以外は、全くストレートと同じようにしてケーブルを作ります。
ここで、ストレートケーブルとクロスケーブルの利用法に関して、簡単に復習して置きます。
当然のことながら、ケーブルは、二つの装置を結んで、その間で通信が可能になるようにするものです。
したがって、「ケーブルで何と何を結ぶか?」というのが重要なポイントになります。
実は、10Base-Tで結ぶ装置は、単純にいって、次の二種類あると考えて構いません。
PCやRouter
のように通信を行うために、IP Addressをつける必要がある装置です。
結ばれるものが分かれば、後は簡単です。ストレートケーブルとクロスケーブルの違いを端的に述べると以下のようになります。
違うGroupに所属している装置間を結ぶ線です。
このパターンが結線の基本的な形で、HubとPC、SwitchとRouter等、異なるGroupに所属している装置間をストレートケーブルで結びます。
実際に(IP)通信を行うのは、PCとPCやRouterとPCの様に、IP Addressを持つもの同士で通信を行うわけですが、実際に利用する場合は、PCとHubそして、そのHubとPCの二本の接続を利用して、通信できるようにします。
同じGroupに所属している装置間を結ぶ線です。
このパターンは、特殊な場合と考えてください。したがって、クロスケーブルは、ストレートケーブルに比較して、利用されることは稀である(18)と考えることができます。
良く利用されるパターンは、二台のPC間で、Hubを経由せずに、直接接続して通信を行う場合で、二台のPC間は、クロスケーブル一本で簡単に接続できるため、重宝することがあります。
また、HubとHub, HubとSwitchを接続するときも、やはり、クロスケーブルで接続することができます。
クロスケーブルの利用は稀と言いました。確かに、二台のPC間を繋ぐのはちょっと、稀かもしれません(19)。しかし、HubとHubを繋ぐという応用は多々ありそうです。
実は、最近のHubやSwitchには、uplink portが用意されている(20)ものが多く、実は、このuplink portは、機械の内側で、クロス接続されています。
つまり、「一方のHubの普通のportと、他方のuplink portをストレートで結ぶこと」と、「Hubの普通のport同士を、クロスで結ぶ」ことは、同じ結果になります。
このために、ますます、クロスケーブルを利用する機会が減ってきているわけです。
普通は、一つのportだけ特別に横に、何らかの切り替えswitch等が付いており、これを切り替えることによって、普通のportとして振舞ったりunlink portとして振舞ったりするようになっています。
ところが、一時の製品に、このswitchの代わりに、単に、内部的に同一のportなのにもかかわらず、二つ口のどちらかにケーブルを繋ぐと、一方に繋げば普通、他方に繋げば、uplinkとなるような製品があります。
これは、もし、誤って、同じportの二つの口の両方にケーブルを繋ぐとその瞬間に、二つのケーブルがショートし、この結果、機械が壊れるようなことは起きないのですが、そのHubでつながっているNetwork全体が通信できなくなります。
是非、このような間違いをしないように気をつけてください。
ここでは、ケーブルに関する様々なチップスを説明します。
10Base-Tのケーブルは、4対8本の線からなっています。実は、そのうち利用されているのは、2対4本だけです。具体的には、橙対と緑対が利用されています。逆に、青対と茶対は、利用されていません。
したがって、当然のことながら、青対と茶対は結線が誤っていても、問題なく10Base-Tのケーブルとして利用できます(21)。
昔の古い10Base-Tを見ると、時々、4本( 1, 2, 3, 6 )だけが結線されているケーブルを見かけますが、それでも通信ができる理由はここにあります。
初めの内は、ストレートとクロスが良く分からないと思います。しかし、この二つは簡単に見分けることができます。
もちろん、色の並びを覚えておけば、間違いなく判断できるのですが、もっと簡便な識別方法がありますそれは、「二つのコネクタを並べて腹の方から見た時に両方の並びが全く同じものはストレート(22)、そうでなければクロス(23)
実際は、これだけでストレートと断定するのは、もちろん、間違いなのですが実は、これさえあっていれば、(例によって、短い距離なら..)実は、通信ができてしまいます。
その意味では、ほぼストレートと断定してよいでしょう。
もちろん、本当は「ストレート以外」というだけですが、普通は、ストレートとクロスしかないので、「ストレート以外はクロス」と考えても構わないでしょう。
でも、まあ、本当を言えば、CISCOで利用するコンソールケーブルも、結線が違います。実はCISCOの場合は、二つのコネクターの色の並びを見ると、その並びが丁度逆順になっていることが分かります。
ストレートとクロスの結線を比較すると、違いは、橙対と、緑対を入れ替えたものになっています。
つまり、クロスケーブルを二対つなぐと二度入れ替えが行われるため、元に戻ります。つまり、二本のクロスケーブルを繋げば、一本のストレートとして利用できるわけです。
したがって、クロスケーブルだけしかなくても、Hubのuplinkにクロスケーブルを指せば、その先にPCをつけることができます。
10Base-Tストレートケーブルの規格には、EIA/TIA-568BとEIA/TIA-568Aの二つの規格があります。
実は、EIA/TIA-568Aのストレートケーブルというのは、二つのコネクタの線の色の順番が、両方共、緑白で始まる配列にしたものです(24)。
もちろん、どちらでも構わないのですが、皆さんは、EIA/TIA-568Bの方を学んだ(25)わけです。
なぜ、A規格と、B規格の二つ規格があるのでしょうか?そして、なぜ、CCNAでは、敢えて、B規格の方を学んだのでしょうか?これには、次のような歴史的な理由(26)があります。
昔々、まだ、ケーブルに規格がなかったころ、一つのケーブルメーカが市場を支配しており、そのメーカでは、今で言うところのBの規格で線を売っていました。更に、そのメーカは、よくあることなのですが、その線の並びで特許を取っていました。
このために、その他メーカは、その主流メーカにライセンス料を支払ってそのメーカと同じ並びにするか、あるいは、敢えて、異なる並びにし(27)顧客から、「これ、色の並びが間違っているのじゃないの?」という苦情に対応するかの二者択一を求められていました。
このままでは、不利だと感じた、主流メーカ以外のメーカ達は、自分たちの立場を守るために、ケーブルの色並びに関する規格を共通で新たに(28)作り、それを公的な規格、すなわちEIA/TIA規格として、制定するように働きかけました。
この結果できたのが、EIA/TIA-568 ( AもBもない.. )でした。
このため、この時点から、二つの規格、すなわち当時のデファクトスタンダードだが、公の規格であるBの方と、公の規格だが、それほど利用されていないA規格が両立する形になったわけです。
その後、Bのライセンスも切れ、誰でもBの規格のケーブルが作れるようになり、また、当時の状況を踏まえたうえで、EIA/TIA-568の規格に関して改定が行われ、それまでのEIA/TIA-568の規格にEIA/TIA-568Aという名前を付け、業界のデファクトスタンダードの方は、EIA/TIA-568Bという形で共に、公式な規格として制定されたわけです。
このような経緯から、既に、公な規格でもあり、また、一般に普及しているBの方が、一般的に見られることから、CCNAでは、Bの方を(先に.. )に教えるわけです。
既に、Aは、死んだ規格と考えても構わないのですが、これがあると、クロスケーブルの説明が容易(つまり、一方のコネクタがAで他方がBとする)なので、Aは別の意味で、生き残っているといえるわけです。
日本では気が付かないのですが、実は、RJ-45のコネクタや、Catelgoly-5/3のケーブルは、アメリカでは良く見かけるものなのです。なぜならば、これはアメリカの電話線と同じものを利用しているのです。
要するに、アメリカには、建物を建てると、当然のことながら、この「電話線」が引かれます。そこで、その電話線を利用して、Networkを作ってしまおうという発想から生まれたのが、10Base-Tというケーブル(29)だったのです。
アメリカの電話の規格では、あの4対8本のうち実は、真ん中の青の対の1対2本( 4, 5のピン)だけを利用します。そこで、LAN用のケーブルでは、この青をさけて、1,2,3,6という、緑の対( Bの場合.. )が青をはさんで、生き別れになってしまったわけです。
だから、ケーブルを作るときにも、ちょっと面倒(30)になってしまいました。